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債券市場を概観する金利関係の商品はマーケットの中で1番見えにくいものです。為替と株式は日常生活との結びつきが密接ですが、金利はせいぜい預貯金金利と住宅ローンくらいしかかかわり合いがありません。
金利はそれほど頻繁に動くものではないのでマーケットのイメージから遠いという感覚もあるでしょう。しかし、金利は経済を見るうえでもあるいは一般的に社会を観察するうえでも大変重要なマーケットです。
金利こそが国や社会の体温を示すと言っても良いからです。さて、先に述べたように短期資金のマーケットは公定歩合の水準に強く影響を受けますので、中央銀行の政策が市中の短期金利に関しての決定的な要因となります。
これに対し、必ずしも金融政策と連動しないのが中長期の債券市場(中長期金利市場と同じ意味)です。そして、債券市場と兄弟関係にある金利スワップ市場も「体温」を計測するためには大切なマーケットですので、まずこの2つの商品と両者の関係を解説しておくことにしましょう。

債券とはご存知の方も多いかと思いますが、満期と支払金利があらかじめ決められた有価証券のことです。国が発行するのが国債、地方公共団体が発行するのが地方債、事業法人が発行するのは事業債です。
この他にも、非居住者が円建てで発行する円建て外債(サムライ債)、一定の資産を担保にして特別目的会社が発行する資産担保証券(アセット・バック・セキュリティーズ、通称ABS)、金利や元本の支払いに対してさまざまな特約の付いた仕組み債などがあります。また、特定の債券発行銀行が発行する金融債という日本独特の債券もあります。
これはいずれ社債の中に組み込まれていくことが予想されます。債券は株式と同じように証券会社で販売しています。
なかでも国債は銀行や郵便局でも購入できるようになり、身近な商品となりました。投資信託にも公社債投信など債券を組み入れたものが増えていますし、円建て債券だけでなくドル建てやユーロ建てなどの外国債券も購入される個人投資家が増えていることを考えると、債券という言葉はかなり定着してきたと言えます。
ただ、債券の本当の性格まではまだ浸透しているとは言えません。なぜなら、債券は株式に比較してリスクがない商品と認識されているからです。
日々大きく変動することのある株式に比べて債券の価格リスクの変動性が小さいことは事実です。しかし、だからといってリスクが皆無ではありません。
ですから、リスクがないから債券の金利は低くても仕方がない、というのは必ずしも正しい認識ではありません。債券には変動金利のものもごく一部にありますが、ほとんどは満期まで金利が一定の固定利付債券です。
固定利付債券のリスクを決めるのは発行体の信用度、支払金利、そして満期までの期間です。国債の場合は、発行体の信用力には(議論のあるのは承知のうえで)問題なしと考えておきます。

残ったパラメーターは金利と満期までの期間です。国債のリスクは満期までに、例えば満期が10年後であったとして10年間にマーケットの金利が上昇していく可能性のことです。
今、その10年国債の金利が2%だったとします。これを購入して満期まで保有する人は、10年の間に金利が上昇してもっと高い金利商品を購入する機会を放棄したことになります。
いや、金利が上がったところでその国債を売却して高い金利の商品に乗り換えれば良かろう、とお考えかもしれませんが、それは不可能です。なぜなら、金利が上昇しているときには手もとの国債の価格が下落しているからです。
仮に100万円の国債を持っていたとしても売却時には目減りしている(例えば99万円)ため、売却すれば損が実現することになります。中長期の債券を保有するということは、そのようなリスクを負っていることです。
中長期の金利マーケット、つまり債券市場は株式ほどではないにせよ、毎日変動しています。国債の大増発の結果、マーケットの規模も参加者の数も大きくなり潜在的な変動性も高まりつつあるのが現状です。
これに加えて、債券の発行体の信用リスクも考えなければなりません。「債券はデフォルト(支払不履行)しない、させない」という不文律があったのは過去のことです。
以前の日本の金融システムでは、メインバンクが社債管理会社となって、社債発行体が支払能力を失っても銀行が面倒を見る慣行がありました。しかし、今はそういう時代ではありません。
日本企業の倒産、地方財政の破綻などは現実の問題となりつつあります。円建て外債のマーケットでは実際に中国のある発行体について、元本の支払いができないケースが発生しました。

このように、債券の安全性は十分に検討する必要があります。国や政府が発行した債券であっても絶対に安全ではないことに注意すべきでしょう。
債券価格と金利債券に類似した金利スワップさて、債券と一番関係の深いマーケットと言えば金利スワップです。これはプロの金融機関が主導するマーケットです。もともとスワップは異なる通貨間の債務を2者間で交換する、例えばドル債務と円の債務を交換する(金利、元本ともに交換する)という取引から始まりました。
それを応用して同一通貨の間での債務の交換、すなわち金利のみを交換する取引が1980年代前半に急増しました。大量の変動債務を抱える銀行や国のニーズから出てきたものです。
当時、変動金利で資金調達をしていた銀行や欧州各国は、自分で変動利付債券を発行するよりも固定利付債を発行してスワップ市場を利用して変動金利の債務に変換した方がコスト安になることに気づきました。これが、金利スワップ市場の活性化に火をつけました。
銀行や国のニーズだけでは一方通行のマーケットですが、反対サイドに固定金利での調達を行う巨大な企業群がいました。彼らは銀行借入などの短期変動債務を、スワップを通じて固定金利の債務に変換していきました。
この負債構造の違いが金利スワップのマーケットの発展を支えました。投資銀行は自己勘定でポジションテイキングを開始し、自ら胴元となってスワップビジネスを開拓していくことになったのです。
さて、その金利スワップと債券の関係を考えてみましょう。一般的な金利スワップは、例えば5年間の契約において2者間で一方の当事者Aが固定金利(例えば年率2%)をもう一方の当事者Bに支払い、反対にBがAに対して変動金利(例えば3カ月での金利見直す条件のインターバンク金利)を支払うという約束です。
このキャッシュフローをAの立場から見ると、Aは何らかの事業収益を変動金利で受け取りながら負債として固定金利を支払う債券の発行者と同じ立場であり、またBは何らかの借入費用を変動金利で支払いながら債券運用で固定金利を受け取っている投資家と同じ立場となります。すなわち、スワップ取引の当事者はキャッシュフローで見る限り債券の売り手と買い手の間の関係と(正確にではありませんが)似ています。


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